BLOG

おばちゃん美容室

田舎の方に行くとある「ちえこ美容室」みたいな名前のついた美容室が好きだ。
宣伝もせずにそこに住む人の髪型を作っている。だいたい覗くとだれかがいてお茶を飲んでいる。そんな美容室だ。

20歳で専門学校を卒業し東京に出た。「5年で全てを吸収して茨城に帰る」それが目標だった。休みの日も、寝る間も惜しんで仕事に没頭した。
そういう意味で東京はとてもいい、
気持ちがあれば学びたい事はなんでも揃っている。

25歳の時にある講習会に参加した。当時カリスマ美容師ブーム絶頂期の中、人気を博していた一人の美容師の講習会だった。必死で吸収しようと最前列でその人の技術を食い入る様に見ていた。講習も終盤になりその人が皆んなに質問を投げた。「お客さんの髪型決めるまでにどのくらいの時間をかけますか?」
それぞれ前にいた人が指され答えていく。
「5分ぐらいですね。」「10分です。」
「15分ですかね。」そして僕も聞かれた。
「僕は髪型は人と人の関係性があって成り立つものだと思っているので最低30分はかけます。」そのあとにその人が言い放った。
「5秒だよ!!」
200人程いた参加者が皆「お〜〜〜。」と歓声をあげた。僕は恥を欠かされた。悔しかった。それと同時に「いつか必ず30分の時代を作ってやる!!」そう心に誓った。カリスマ美容師が大嫌いになった。

それから15年以上経った。今もあの時の経験は鮮明に僕の心の中に残っている。
今でも時折思い出してはあの時の気持ちが蘇る。
ちょっと感じ方が変わって来た。25歳の時、僕はあのカリスマ美容師を許せなかった。憎くてたまらなかった。敵だと思っていた。
でも思う、あの時の経験のお陰で自分の進むべき道が明確になりここまでこれたのだなっと。そう考えるとあの人のお陰なのだ。
あの時は物凄い憎く感じていたが、近頃は思い出す度に感謝の気持ちが湧いてくる。心からありがとうと思える存在になった。
その人は今だに東京でカリスマ美容師として活躍している。僕自身が勝手に思っていただけなのでなんの繋がりもないが本当に良かったと思っている。

意見や感覚その他色々違いがある事で自分に気づく事ができる。
知らず知らずのうちに成長させらていたのかもしれないと、教育の深さを感じている。身長が高い低いも周りの人がいるから自分の高さがわかるんだな、と思えるようになった。違いを認め自分を知る事。その違いを楽しんでもらえる事が人ができるサービスの醍醐味なのかもしれない。
全てはお陰様ですね。

A!KEY