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ロマンチシズム

 

顎下まで伸びた切りっぱなしの髪にボロボロに穴があいたジーンズを履いて足元はコンバースジャックパーセル。カッコイイと思っていた。中学時代の憧れ、ニルバーナのカートコバーン。就職して髪を伸ばせる事が嬉しかった。自己表現の自由が許された世界に入った僕は、迷わず髪を伸ばし始めた。
身長が180センチぐらいあるから、そんな奴がロン毛だとただただむさ苦しいやばい奴だ。もちろん、自分ではカッコイイと思っていたけど。最近都内に行って向こう側からロン毛の男子が歩いてくると「うわっ!!」
と思って道を開けてしまう。

ニルバーナを知ったのは中学時代の先輩に、「これカッコイイから、聞いてみて」と言われて渡されたCDアルバム「ネヴァーマインド」がきっかけだ。ニルバーナの2ndアルバムネヴァーマインド。ビルボードチャートで1位になりグランジ旋風が起きた。当時はYouTubeなどなかったから映像で見るなんて事は簡単に出来なくて、アルバムの中にある写真を食い入るように見て音楽を聴いて頭で想像するしかなかった。
今思うと、それもなかなか良かったかもしれない。

カートコバーンってどんな奴なんだろう、どんな事考えているんだろう。何かを感じたくて少ない情報を貪っていた。ちょっとでも近づきたくてとりあえず真似してみた。髪がボブまで伸びた時、とても嬉しくなった。なんか悟ったような心の満足感があった。特にギターが弾ける訳でも、歌が歌えるようになった訳でもないけど、ただ見た目を真似しただけだが僕の心の中はロックで溢れていた。回りからすればロックでもなんでもないんだけれども、僕はロックだった。なりたい自分になれた気がした。そんな自分が好きだった。

憧れる何かに近ずきたいって思う事は時折あって、
それに近ずく為に出来る事でみじかな事はファッションや髪型を真似する事だった。
憧れるその人の感覚を追尾体験しているかのようで、論理的ではなく、感覚的に憧れる何かを体験しているみたいだった。

最近は「誰か」というよりは、「自分とは」って考える事が多くなったのか、なかなか憧れる機会も減った気がする。ただ「日本人とは」とか「日本人としての美意識は」とかが何となく気になり出した。仕事柄、着物などに触れる機会があるからなのか、着物を着た姿を見ると自然と美しいな〜と感じてしまう。それは自分が日本人であるからなのか、考えるよりも先に心が反応してしまう。直感的にいいなと思ってしまっている。何とも言えない奥ゆかしい美意識を感じる事ができる。

明治時代に入った頃から一般の人も着物から洋服を着るようになり、今では何か事がある時に着物を着る程度で頻繁に着物を着る事はなくなった。着物の存在もコスプレのような形になってきている感じがする。悪い事ではないが、七五三や成人式も写真を撮るための衣装としての存在価値になってきている。もともとは着物を着る事や髪を結い上げる体験そのものが七五三の始まりでもあり、体験をする「事」が中心であった。

効率的にすればすぐに終わってしまう事なんだけど、着物を着付けてもらう時間、ヘアメイクをする事。神社にお参りに行く事。着物を着ている時間そのものが理屈ではなく感覚的に日本の美を体験出来る瞬間なんだと思います。
ひとつひとつが憧れられるような形で提供できたらいいな〜と。成人式の写真が黒歴史過ぎて見たくないなんて事も良く耳にします。ちょっとかなしいな〜!!
そんな事だと着物の素敵さが今の人にはなかなか感じてもらえない、どころか着物はダサい、古くさいものだと思われてしまうんだろうな〜。日本の美意識を出来るだけ良いものと感じてもらう事も少なからず僕らの仕事の一部ではあるんだろうと最近思うようになってきました。

今の時代の着物のあり方を少しでも提供できたらと良いなと考えています。お母さんやお婆ちゃんが着た想いの詰まった年代物の着物でも、帯の合わせや小物、ヘアメイクなどの細かいバランスを取る事で今の人が素敵だと思える雰囲気を出す事って出来るんです。むしろ古い事がより上品さや、綺麗さを引き出してくれます。変わらないものと変わっているもの、相反する事を上手にブレンドできれば凄いクールな着物スタイルになります。本来、着物もそうやって常にクールだったんだろうなとも思います。カートコバーンに憧れている僕のように、着物という存在、日本人の美意識に今の人たちが憧れ続けられる様な着物スタイルを提供することが今後の目標ですかね。
着物に関わる仕事をさせて頂きそんな事を感じました。

今年は成人式でヘアメイクをしてあげた子が結婚式でもヘアメイクをしてあげて、そしてなんと七五三で娘のヘアメイクをさせて頂いた方も。もうお父さん的立場を通り過ぎて気持ち的にはお爺ちゃんです。
時が経つのはホント早いな〜。
今後もみんなの成長を美容師という仕事を通じて陰ながら応援し続けたいですね。
見た目はお爺ちゃんならないように。

写真は茨城で活躍する写真家、仲田絵美さん、瀬能啓太さん、ほりかわ波さんによるものです。

七五三、成人式、結婚式に関する着物のレンタル、撮影等のご相談を随時受け付けております。
興味ある方は無料での相談会をしていますのでHP予約メニューにてご連絡ください。